◆今年も残すところあと一ヶ月となり、またあわただしい時節がやってまいりました。今年の日本は大災害に見舞われ、政治も経済も私達の生活も困難を極めています。しかしこの混乱は日本だけかというとそうではありませんでした。世界を見回してみても大きな地震災害だけでも2月のニュージーランド、3月のミャンマー、8月のアメリカ(震度はさほどではなかったが、非常に珍しい地域での地震)、9月インド、10月トルコと頻発しました。その他にも洪水、竜巻、山火事、ハリケーンと大規模な災害がいつになく発生したのも今年です。また政治の世界では年頭のエジプトに代表される、北アフリカ地域の政権崩壊、続くヨーロッパ金融危機に端を発するイタリア、スペイン、ギリシャ等々の政権交替劇。このように同時多発的に政権交代が起こるのも大変珍しい流れでした。
◆今年のキーワードは「取捨選択」。まさに人間の政治的支配においても台頭するもの、消えてゆくものが顕著に現れている流れになっているようです。皆様は自分の身の回りの「取捨選択」は上手く出来たでしょうか。このキーワードは来年の流れに向けても重要な意味を持っているので、是非とも実践していただきたく思うのですが、それでは「必要なもの、不必要なもの」を見極める目というのは何を基準にしたらよいのでしょうか。
◆最近、ブータンという国の国王がご結婚され来日されました。テレビ等でご覧になった方も多いことかと思います。ブータンはインドと中国にはさまれた南アジアの比較的小国で、産業の中心は農業と意外にも電力輸出です。山に囲まれた地域性を利用し、水力発電で得た電力をインドに輸出し外貨を稼いでいるようです。私も過日ご縁あって、現国王の弟殿下が来日された際にはお会いする機会をいただきました。英国ケンブリッジ大学に留学経験もお持ちの27歳の殿下は日本の若者とはまたちょっと違った雰囲気を持つ、ひたむきな青年という感じでした。この若き王族を有するこの国が他の先進国から注目されていることの一つに「国民総幸福度」というものがあります。国民の幸福を指数で表して幸福度を測るというものです。その規準は1.心理的幸福、2.健康、3.教育、4.文化、5.環境、6.コミュニティー、7.良い統治、8.生活水準、9.自分の時間の使い方、の9つの構成要素で決められます。最初の「心理的幸福」という項目はなかなか数学的に計測することは難しいと思いますが、この場合は正・負の感情を心に抱いた頻度を地域別に調べて、国民の感情を示す地図を作るというなかなか手の込んだ手法を用いるそうです。正の感情とは
1.寛容、2.満足、3.慈愛。負の感情が
1.怒り、2.不満、3.嫉妬という具合です。どの地域の、どんな立場の人が怒っているか、慈愛に満ちているのか、それを調べているのです。そして地域別に不満が解明されるとそれに合わせた行政を行ってゆくというものだそうです。行政(政府=王室)に、あなたに不満はないかと尋ねられればなかなか「ある!」とは云いづらいかとは思いますが、先進国家にはまずあり得ない行政手法であるので、このような発想は日本の政治家も大いに学んで欲しいところではあります。
◆それでは未来創学アカデミーが提唱する「自分幸福度」とは何か。それは「自分の存在感をどのくらい感じられるか」ということです。
◆最近気になることに「言葉の使い方」に関する分析があります。この頃の若い方々は対話を好まず、議論もしないという指摘がありますが、皆様は如何ですか。もちろんこれはすべての人に当てはまることではないでしょうが、そのような傾向にあるようです。心理学者の分析によると、「それは議論や対話によって相手との関係がまずくなり、自分が傷つくことを回避する行動」であるそうです。確かに最近「一人称で会話する」人が増えているようです。一人称で会話するというのはどういうことかというと、複数でいるときに同意を求めたくても、相手が自分と違う意見であった場合には自分が傷つくので、とりあえず独り言を云い、それに相手が反応し同意してくれば会話が始まり、そうでない場合はそこで終わるというものです。例えば何かを食べているときに「旨っ!」としゃべります。これは「美味しいよね」という問いかけではなく、あくまで「独り言」です。これに相手が「そうだね」と答えれば会話となるわけです。「凄っ!」「デカっ!」などの『小さい「つ」言葉』がこれに当たるようで、最近無意識に多く使われているようです。このように人間は集団的動物であるにも関わらず、コミュニケーションが取れなくなっているのが現状です。意思疎通の欠如はあらゆる集団に広がっているようで、私の関係する学校や企業などにおいても重要な問題となっています。
◆このように人間関係に臆病になり、集団生活を疎ましく思うようになると、その社会や国は間違いなく勢いを失ってゆくことになります。現代日本はそのような状況に陥っています。ですから私は「自分幸福度」を意識する必要があると提言しています。私のいう「自分幸福度」とは、決して「自分が幸せと感じるならば他人はどうなってもよい」という「わがまま」ではありません。宇宙的真理には「共生とバランス」があります。自分だけがわがままを通し続けることは出来ませんし、そこには必ず反発が起こります。ですから真の幸福感は共生の中にあるということです。通常、人によって「幸福」だと感じる度合いも内容も違います。しかし、すべての人に共通した満足感はあります。皆様の中で、他人から感謝されたときに嫌な気分になる方はまずいないでしょう。集団の中で、期待され頼りにされ必要とされたとき、充実感が沸き起こるでしょう。人間は自分が求められ、相手から喜ばれたときに幸福感を感じるように出来ているのです。それは正に、お互いのオーラが通じ合うからなのです。では「自分幸福度」をどう実感するかといえば、それは簡単!一日に何回感謝されたか、何回「ありがとう」といわれたかでわかります。感謝されようと無理をしても他人からの感謝はなかなか得られません。「自分の為に何をしたか」ではなく、「誰の為に何をしたか」が問われます。
◆今年のキーワード「取捨選択」の基準は、「自分幸福度」向上のために生活の中で「何に力を注ぎ、何が必要か」ということを考えればよいわけです。今年ももう残り僅か。ほんの少しでも幸福感に浸れる実感が持てれば生体エネルギーは輝き、生活は生き生きとしてくるでしょう。